読書「デザイン思考の仕事術」

先日「デザイン思考の仕事術」棚橋弘季著 を読みました。

ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術

ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術

とあるUIデザイナーがおすすめしていた本で、とりあえず読んでおこうという感覚でAmazonでポチったのですが、読んでいてグっとくる点がいくつもあり、ドッグイヤーしすぎて本の小口が若干分厚くなりました。。
 
簡単にこの本の解説をします。この本で言う「デザイン思考」とは、頭の中で考えてることや集めた情報を外に出し、整理し、組合わせたりして、新たな発見やアイデアを計画的に生み出そうというものです。「デザイン」をグラフィックや装飾というような狭い範囲の作業としてではなく、問題発見や企画立案やというような物事を組み立てる作業として取り上げ、その方法を紹介しています。「KJ法」だったり「ペルソナのキャスティング」など既によく使われている手法が出てきますが、もっと根本的な情報の整理について丁寧に記されてあり、「デザイン」の基本に戻れる本だと思いました。
 
自分はこの本の内容をちゃんと消化しきれてはいませんが、自分が仕事で今後設計作業をするにあたり、特に意識しておくべき事柄だと思った点だけメモしてみました。
 
■情報とは豚のパックである
情報とはスーパーのパックされた豚のことである、という表現が分かりやすくて印象的でした。
 
「パックされた豚」とはどういうことか。著者は養老孟司さんの「情報」と「情報化」について区別していることに注目しています。
「情報化」は自然物を人口の情報にパッケージ化する作業のことであり、「情報」はパッケージされた結果の人工物のことをいいます。
絵を描いたり写真撮影したり、マニュアル化やシステム化もパッケージです。自然は常に変化し続けるけれど人工物は一旦固定されると成長しません。自然物の動きを止めて固定化するのが情報化でありデザインであると、本書では言っています。我々は情報化する過程で何かを捨象していて、捨象し純化された情報にしか触れない人は、既に捨象された中に本当に自分の必要なことがあったとしても気づきません。だから情報化されたものだけをみるのは危険である、と。
 
スーパーに売ってる豚っていうのは、もうカットされてるものであるから、元々これがどんな大きさのどんな鼻の形をした豚だったのかも、どんな養豚場でどんな餌を食べて育ってきたのかも私たちは知りませんよね。「豚」のパックを買って、「豚」を分かった気でいますが分かった気になっているだけ。知っているのはこれまで誰かがテレビや雑誌で伝えた「豚」であって、「豚」に対するほとんどの 情報は自分の目で見た結果のものではありません。

何か問題を見つけて解決しようとするならば、生きてる豚を見なければいけない。簡単に調理できるようにパックされた状態ではない、生きてる豚(生の情報)を観察し、そこから得られる気づきを活かすことが必要です。
発想を得たいというなら、分かっていることの外に出ること。
 
普段ツイッターとかニュースを読んでいてもそこには誰かのフィルターがかかっており、何かがそぎ落とされています。そんな「豚のパック」を読んでちょっと知識が増えたなーだなんて思っていた私の情報収集のしかたはダメダメですね。これだけの情報を素材に仕事しようとしても皆と同じような発想しか得られない。なので、ユーザーテストと言わないまでも普段からユーザーのコンテキストやユーザーと商品・サービスとの関係について自分なりに観察・分析して掘り下げていかなきゃダメだな〜と思った次第です。
 
■デジャブの反対「ヴュジャデ」
問題発見をするために私たちは情報収集を行うけれども、その作業の中で、驚きを感じられるような新しい視点を自分で発見することが重要だと本書では述べています。
そして「ヴュジャデ」というIDEOのトム・ケリーが使っている造語を引き合いに出していました。
「ヴュジャデ」はデジャブの反対の意味で、「いつも経験しているものに驚きを感じる事」です。
身の周りのものから驚きを感じられるものを発見できるか、もしくは集めた情報を整理する中で、情報の違う側面に気づけるか。
このヴュジャデが起きないと問題発見や問題解決につなぐことはできない。
ということで、じゃあヴュジャデに出会うためにはどうれすればいいか?
 
・軸を替える
見方、時代、場所、状況、考え方を変えて想像してみる
・いくつかのものを並べてみる
情報を並べてグループ化したりランキングにしてみたりして空間に並べてみる事で集めた情報の意味が見えてくる。
・異なる物同士をつなげてみる
似てない物同士を繋げてみて関係性を見いだす。推論を立ててみる。
・言い換えてみる
抽象的、具体的な言葉にしてみる。
・文脈の中で見る
目的、行動、期待を把握する。人の生活の中でどう扱われているのか文脈をつくる。
・見た物を他人に話してみる
集めた情報を他人に見せ、他人の視点を知る。
 
■情報が動く
最後にぐっときた表現をメモ。
「情報は視覚的に並べ方を変えたり別の物とつなげてみたりすることで、情報そのものが動いてくる。」「眠っていた情報がもう一度動き出して情報化の機会を与えてくれる」
別の視点や組み合わせ次第で、情報が既存の分類から離れ、新しいグループの中に移動でき、それを「情報が動く」と表現しているわけですが、これ、創作活動とかデザインをしているときのハッとひらめく感覚に似ているような気がして面白いなと思いました。
 
いやまぁ、このひらめきを計画的に生み出すのが「デザイン思考」であって前の項目で紹介したような方法でできるということなんですが。
 
他にも色々メモしたいことがありますが、まとめきれないのでこのへんで。。
この本はまた何度も読む事になりそうな気がします。
仕事で、手段が目的になってしまっているときなんかに読むといいですね、きっと。基本に戻れるので。